
例えば夫(配偶者)が無くなった場合、「残された養父母など姻族の世話を誰がするの?」という問題で悩む人も多いと思います。
夫が亡くなっても、姻族関係は自動的に無関係になるわけではないからです。
そのため、夫の財産、養父母の世話、お墓などをどうするか、妻と姻族で話し合わなければなりません。
そして下手をすれば、妻に不利な話を全て姻族に押しつけられることも、あり得るのです。
そのように姻族ともめないために、「姻族関係終了」という制度があるのをご存知でしょうか。
今回本記事では、姻族関係終了の制度と手順と手続き、メリット・デメリット、姻族との関係を終了するかしないかの判断基準などについて解説します。
自分や家族にとって、最適な選択をするための参考にしてください。
姻族関係終了の制度とは?提出する書類の手順と手続きは?

(姻族とは?)
姻族とは、婚姻することによって生じた、「義理」の父母や義理の兄弟姉妹などの親族のことを言います。
配偶者側の親や兄弟姉妹のことですね。
この姻族関係は、
・配偶者と離婚
・・・自動的に終了となり、離婚後は元の姻族に対して法的にも義務や権利関係も無関係になります。
・配偶者が死亡
・・・自動的に姻族関係は終了しません。
(姻族関係終了の制度とは?)
配偶者が死亡したときは、義父母の世話や相続問題、自宅の管理、お墓の問題、姻族とのトラブルなどに巻き込まれることもあります。
そのような問題を避けるため、配偶者が亡くなった後に、義理の父母や兄弟姉妹などの姻族との法律上の関係を解消するための届出が「姻族関係終了届」です。
これを提出することで、義理の家族との法的な扶養義務がなくなり、名字やお墓の継承などにも影響を与えることがあります。
また、基本的に姻族関係を終了するかどうかは、本人の自由意志なので、姻族の同意や承諾は必要ありません。
(姻族関係終了届の提出手順)
(必要書類を準備する)
・姻族関係終了届
・・・姻族関係終了届を入手します。
市区町村の役所で入手しますが、オンラインでダウンロードできることもあります。
・戸籍謄本(全部事項証明書)
・・・本籍地以外の役所に提出する場合に必要ですが、本籍地に届出する場合は不要です。
また、添付自体が不要な役所もあるので、提出前に確認してください。
・本人確認書類
・・・届出人は生存配偶者のみです。
運転免許、パスポート、マイナンバーカードなどが必要です。
・印鑑
・・・押印は任意の場合があります。
(届出先に提出する)
・市区町村役場への提出
・・・本籍地または住所地の市区町村役場の窓口へ直接提出します。
また、郵送での提出も可能な場合があるので、事前に役所へ確認すると良いです。
・提出時期
・・・配偶者の死亡届の受理後であれば、いつでもよいとされています。
・費用
・・・届出費用は無料です。
(手続き完了後の確認)
・審査
・・・提出された書類に基づいて審査が行われます。
問題がなければ、姻族関係終了届が受理されます。
・届出受理
・・・受理されると、戸籍に姻族関係終了が記載されます。
必要に応じて新しい戸籍謄本を取得して確認しましょう。
姻族関係終了届提出による姻族とのメリット・デメリットは?

手続きを進める前に、メリット・デメリットをよく考えた上で判断しましょう。
(メリット)
・義理の家族との法的関係の解消
・・・姻族関係終了届によって、配偶者の父母や兄弟姉妹との義理の関係が、法的に「無関係」になります。
姻族としての関係が消滅するので、今後の付き合いなど精神的な負担は無くなります。
・姻族とのトラブルを避けられる
・・・姻族との遺産相続や、財産管理のトラブルを避けられます。
共有財産の分与や遺産相続は、姻族関係が終了しても正当に受け取ることができます。
万が一、姻族から不正不当な要求をされても、自分の正式な相続分は保護されます。
遺族年金も、そのまま届出人が受け取ることができます。
・扶養義務がなくなる
・・・養父母や養兄弟姉妹などの扶養義務が全くなくなります。
赤の他人になるので、義務はないということです。
・介護や経済的支援
・・・義理の父母の介護や、経済的支援をする義務がなくなります。
そのため、自分の生活を優先できるようになります。
・名字の選択が可能
・・・姻族関係が終了しても、旧姓に戻る必要はありません。
ただし、名字を変えたい場合は、別途手続きが必要になります。
・お墓の問題
・・・義父母と同じお墓に入りたくない場合は、入る必要がないです。
・姻族関係終了の証明
・・・戸籍に書類として掲載されるので、対外的に無関係を証明できます。
(デメリット)
・姻族との関係の悪化
・・・これまで築いてきた姻族との関係が悪化することがあります。
姻族関係が無くなるので、姻族と子供が会いにくい環境になります。
・同居からの退去
姻族の家で同居している場合、家を出ざるを得ないことがあります。
・社会的な影響
・・・周囲の人々から、「薄情だ」と思われる可能性があります。
・お墓の継承に影響する
・・・配偶者の家のお墓に入ることができなくなる可能性が大きいです。
そのため、自分でお墓の手配が必要になる場合もあります。
・名字の変更による手続きが発生
・・・旧姓に戻した場合、銀行口座や免許証などの変更手続きが必要になります。
・経済的援助
・・・生活が困窮しても、姻族からの経済支援を受けることは難しいでしょう。
・再考ができない(原則、撤回不可)
・・・一度姻族関係を終了すると、元に戻すことができないため慎重な判断が必要です。
義父母との関係はどうなる?姻族関係終了の判断基準とは?

「姻族関係終了届」という制度があることは知っていても、実際に提出するべきかどうか、どのような基準で判断すればよいか分からないという方も多いのではないでしょうか。
姻族関係終了届を提出するかどうかは、以下のポイントを考慮して判断しましょう。
(姻族関係終了の判断基準とは?)
・義父母との関係が良好かどうか
・・・義父母と良好な関係であれば、手続きをせずそのままにする選択肢もあります。
逆に、関係が疎遠・悪化している場合は、提出をした方がよいかもしれません。
また、姻族とのコミュニケーションが円滑であるか、困難であるかも判断基準の一つです。
・介護や扶養の負担をどう考えるか
・・・義父母の介護負担が大きく、自分の生活に支障をきたす場合は、婚姻関係を解消するメリットは大きいです。
逆に、義父母から経済的支援を受けている場合は、続ける選択もあります。
・お墓の管理について考える
・・・義父母の家系のお墓に入りたいか、それとも自分の実家のお墓に戻りたいかを検討します。
姻族関係を終了すると、義父母及び養父母の家系のお墓の管理義務は無くなります。
・名字の変更が必要かどうか
旧姓に戻したい場合は、姻族関係終了届の提出が一つのきっかけになります。
名字を変えたくない場合は、そのままでも問題はありません。
・感情的なトラブルを回避できるか
・・・義父母が感情的に受け入れられず、大きな対立につながるなら、慎重に判断をする必要があります。
事前に義父母と話し合い、円満な解決を模索することも重要です。
最終的には、姻族との関係をどうしたいか、解消に抵抗があるか、解消することでストレスが無くなるかという、自分の気持ちが一番重要です。
・弁護士からのアドバイス
・・・姻族関係終了届の法的な意味や影響についてアドバイスを受けることができます。
また、財産の相続関係などについても、相談するのも良いでしょう。
まとめ
姻族関係終了届を提出すると、義父母との法的な関係は完全に解消されます。
ただし、現実の関係性や介護・扶養・お墓の管理など、多くの要素を考慮する必要があります。
感情的な問題も含め、総合的に判断することが大切です。