
最近、階段の上り下りがキツイとか、若い頃と比べて、なんだか疲れやすくなったと感じませんか?
もしかしたら、それは「サルコペニア」のサインかもしれません。
サルコペニアとは、加齢や生活習慣の影響によって、筋肉量や筋力が低下することを言います。
放置していると、転倒や骨折をするリスクが高まり、日常生活で支障をきたす可能性も大きいのです。
そこで本記事では、サルコペニアの原因・症状・診断方法や、混同されやすいロコモ、フレイルとの違い、サルコペニアの予防・対策などについて詳しく解説します。
サルコペニアを防ぐための、第一歩を踏み出しましょう。
***目次***
サルコペニアの原因と症状は?診断方法と判定は?

・加齢
・・・加齢とは老化のことであり、防げない体の変化です。
加齢に伴い、筋肉のタンパク質合成能力が低下していくので、筋肉量はどんどん減っていきます。
・運動不足
・・・筋肉は、ある程度の運動で維持できますが、運動量が低下すると、筋肉量も減少します。
・栄養不足
・・・筋肉の合成には、タンパク質をはじめとする栄養素が不可欠です。
肉類、魚介類などタンパク質の多い食べ物を摂らなければ、筋肉量は維持できません。
そのため、栄養バランスに気を付け、摂取量も適度に摂らなければならないのです。
・慢性疾患
・・・糖尿病や慢性炎症性疾患などが、筋肉の萎縮を引き起こすことがあり、運動量低下や食欲不振になり、筋肉量が減少することも多いです。
進行すると、以下のような症状が現れます。
・歩行速度が遅くなる
・・・いつの間にか歩行速度が遅くなり、他の人に追い越されるのが多くなります。
・階段の昇降が難しくなる
・・・階段の昇降が、辛くて難しくなり、手すりが無いと不安になります。
・椅子から立ち上がる際に支えが必要になる
・・・一人じゃ起きにくいことがあります。
・転倒や骨折のリスクが増加
・・・よく転ぶようになり、骨折してしまうリスクが大きいです。
・疲労感
・・・日常的に疲れやすく、倦怠感が続きます。
サルコペニアの診断には、筋肉量、筋力、身体機能の3つの要素を評価することで判断します。
日本では、一般的に「AWGサルコペニアS2019の診断基準」が推奨されています。
① 筋肉量の測定
骨格筋量の測定が出来る装置が置いてある一般診療所や施設で測定します。
二重エネルギーX線吸収法(DXA)または生体電気インピーダンス法(BIA法)という方法により計測します。
・骨格筋指数(SMI)
DXA(男性<7.0kg/㎡、女性5.4kg/㎡)
BIA(男性<7.0kg/㎡、女性5.7kg/㎡)
※両腕両脚の筋肉量を算出し、この腕脚の筋肉量を身長(m2)で補正した値を骨格筋指数(SMI)と呼びます。
② 筋力の測定
筋力はサルコペニアを診断するための重要な指標です。
・握力
男性:<28kg、女性:<18kg
③ 身体機能の評価
身体機能の低下は、サルコペニアが日常生活に与える影響を示します。
・歩行速度テスト
6メートルの距離を歩く速度を測定します。
1秒あたり1.0メートル未満の場合、サルコペニアの疑いが強まります。
・椅子立ち上がりテスト
5回椅子立ち上がりテストで、12秒以下の場合、サルコペニアの疑いが強まります。
またはSPPBのいずれかで判定します。
「総合評価(診断基準)」
サルコペニアの基準では、筋力低下、筋肉量減少、身体機能低下のいずれかが確認された場合にサルコペニアの可能性が大きく、三つの基準を下回るとサルコペニアと診断されます。
参考:
イチからわかる! サルコペニアQ&A 単行本
サルコペニア診療実践ガイド 単行本
ロコモ・フレイルとの違いは?サルコペニアを理解するポイントとは?

サルコペニア・ロコモ・フレイルは、ともに加齢や生活習慣が原因で起こる健康問題です。
・定義
・・・筋肉量と筋力の低下している状態で、主に加齢に伴って進行します。
・原因
・・・加齢、運動不足、栄養不足、慢性疾患など。
・影響
・・・転倒や骨折のリスクが高まります。
・診断基準
・・・筋肉量・筋力・身体機能の低下を基準に診断されます。
(ロコモ)
・定義
・・・運動器(骨・関節・筋肉など)の障害により、立ったり歩いたりする能力が衰えた状態です。
・原因
・・・関節疾患(変形性膝関節症など)、骨粗鬆症、サルコペニアなどが原因になります。
・影響
・・・歩行や階段昇降が困難になり、最終的に寝たきりになるリスクが高まります。
(フレイル)
・定義
・・・加齢により心身が虚弱になり、健康と病気の中間で、介護が必要になる前の状態です。
・原因
・・・筋力低下(サルコペニア)、低栄養、社会的孤立、精神的な衰えなどがあります。
・影響
・・・免疫力や回復力の低下、転倒リスクの増加、認知機能の低下により、病気や怪我をしやすくなります。
(サルコペニア・ロコモ・フレイルの違い)
・焦点の違い
サルコペニア・・・筋肉量・筋力の低下が焦点。
ロコモ・・・運動器全体の障害(筋肉、骨、関節)が焦点。
フレイル・・・身体的、精神的、社会的な全体的な衰弱状態が焦点。
・発生の順序
・・・サルコペニア → ロコモ → フレイルの順に進行することが多く、サルコペニアが初期段階として現れることが一般的です。
サルコペニアは、ロコモやフレイルの原因となります。
定期的な健康チェックを行い、サルコペニアを早期に発見して対策をすることで、健康状態を延ばすことができます。
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サルコペニアの予防・対策!筋肉量を維持する生活習慣と運動法とは?

生活習慣や適切な運動を取り入れることで、予防・対策が可能です。
「食事で筋肉をサポートする習慣」
・たんぱく質を十分に摂取する
・・・1日の目安は体重1kgあたり1.2~1.5gが推奨されます。
主な食品としては、鶏肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などがあり、1回の食事で20~30gのたんぱく質を摂取します。
・ビタミンDを補う
・・・ビタミンDは筋肉の合成を助けます。
日光浴や食事での摂取を心がけましょう。
天気の良い日は、日光浴のためお散歩するのも有効だと思います。
主な食品としては、鮭、サバ、卵黄、きのこ類などがあります。
・抗酸化作用のある食品を取り入れる
・・・筋肉の炎症を抑えるために、ビタミンCやEを含む食品を摂取します。
主な食品は、ブロッコリー、ピーマン、ナッツ類、フルーツなどです。
・カルシウムを摂取する
・・・カルシウムは、骨の健康維持に必要です。
牛乳や乳製品、小魚などを積極的に摂取しましょう。
・バランスの取れた食事を心がける
・・・たんぱく質だけでなく、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルなどもバランス良く摂取することが大切です。
(筋肉を維持する運動法)
運動は、筋肉を維持・増加させるために効果的なので、継続することが大切ですが、決して無理はしないでください。
・筋力トレーニング
・・・筋力を直接鍛える運動で、週2~3回を目安に行います。
おすすめの種目は、スクワット、腕立て伏せ、ダンベルを使ったトレーニングです。
始めは軽い負荷から始め、慣れてきたら徐々に回数や負荷を増やしましょう。
・有酸素運動
・・・筋肉を動かしながら心肺機能も鍛えます。
30分程度のウォーキングや、ジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を、週3~5回程度実施すると効果的です。
無理なく会話ができるペースで、行ってください。
・柔軟性・バランスを鍛える運動
・・・バランス感覚や柔軟性を高めることで、転倒リスクを軽減します。
おすすめの種目は、ストレッチや片足立ちです。
(日常生活でできる工夫)
日常生活の中でも工夫して体を動かしましょう。
・こまめに体を動かす
・・・長時間座る生活は、筋肉量を減少させる原因となります。
定期的に立ち上がって体を動かしましょう。
・階段を使う
・・・数階であれば、エレベーターやエスカレーターではなく、積極的に階段を利用します。
・趣味や日課に運動を取り入れる
・・・ちょっとした運動や働きを習慣にします。
ガーデニングや買い物を歩いて行くなど、楽しみながら行いましょう。
・十分な睡眠
・・・疲労回復のために、毎日7~8時間の睡眠を目指しましょう。
・定期的に健康チェックを受ける
・・・筋肉量や筋力の状態を把握し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けましょう。

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まとめ
サルコペニアは、早期発見と適切な対策によって、進行を遅らせたり、改善させたりすることができます。
健康な生活を送るために、日頃から運動や食事に気を配り、サルコペニア予防に努めましょう。